『ロープ高所作業』と『墜落制止用器具』の関連性について

『ロープ高所作業』と『墜落制止用器具』の関連性について

Fオンラインストア管理人のKENです。

今回は『ロープ高所作業』と『墜落制止用器具』の関連性等について書いていきます。

『墜落制止用器具』についてまだ詳しく書いてはいませんが、今回はこの二つの法律の関係性でよく受ける質問について整理して行きます。

 良く出る質問はいくつかありますが、下記の通りです。

①『ロープ高所作業』をするのに「フルハーネス:墜落制止用器具」を着用しなくてはならないのですか?

②『ロープ高所作業』をするのに「墜落制止用器具特別教育」は必要ですか?

③海外メーカーのハーネスやランヤードは使っても大丈夫ですか?

私は自身で講習会をしているのでこう言った質問に対して答えなくてはならないたちばであることは理解していますが、この手の質問をしてくる方に一言。

自分の命が係っている仕事なので、まずは自分自身でちゃんと調べて下さい!

質問者の多くは得てして、何も調べず聞いてきます。私からすると上記の問題は究極的にはどうでもいいことで、自分で調べて、学び、これが最大限安全が担保できると方法だと判断して作業を行うことが、本質的に重要なことだと思っています。

法律はあなたの命を守ってはくれません。何をするにも高所作業の安全を担保するには最終的には自己責任で“決定”と“実行”を繰り返すしかないのです。

話しがそれたので戻します。

①『ロープ高所作業』をするのに「フルハーネス:墜落制止用器具」を着用しなくてはならないのですか?

原則、フルボディハーネスの着用が必要となります。法律文面の解釈だと6.75m以下については、“胴ベルトタイプの墜落制止用器具“でも良いとなっていますが、6.75m以下のみでロープ作業を行う事は現実的にはないので、フルボディハーネスの着用と考えた方がいいでしょう。

※2022年1月2日からは『墜落制止用器具』の完全施行となっています。 

②『ロープ高所作業』をするのに「墜落制止用器具特別教育」は必要ですか?

『墜落制止用器具』の法律では、3要件が揃う作業を作業員に実施させる場合、事業主に『特別教育』の実施を義務づけています。

3要件とは下記の通りです。

1.高さ2m以上の箇所で

2.作業床を設ける事が困難な場合で

3.フルハーネス型を使用させる

しかし、この規定の最後に括弧書きで(ロープ高所作業は除く)とあります。

ですので、仮に『ロープ高所作業』でフルハーネス型を使用する場合でも『特別教育』は必要ないと考える方は多いかと思います。

では本当に必要ないでしょうか?

もう少し『ロープ高所作業』を拡げた視点で見てみましょう。

高所作業は大きく分けて3つの作業形態に分かれます。

1.レストレイント

2.フォールアレスト

3.ワークポジショニング(ロープアクセス含む)

この3つの形態の特徴や注意事項については別のブログで書きます。

今回、『墜落制止用器具』の法律で規制したのは『フォールアレスト』の作業になります。

ここで、『ロープ高所作業』を行う皆様は、ご自身の日々の作業をよく思い出して下さい。

分かりやすく作業事例を挙げてみます。

フェンスに囲われた屋上。

フェンスに囲われているのでその中にいれば基本的に墜落の心配はないですね。この場合特に安全対策は必要ありません。

ロープを吊り元に結びつけ、自分が降りたい場所にロープを下ろして行く。

この時あなたはどこにいますか?

この時点でフェンスの外に出ているのであれば、それはすでにフォールアレストの作業となります。屋上の縁から墜落出来ないように作業制限をしているのであればレストレインかもしれません。

次に垂らしたロープにバックアップディバイスと下降器具を取付け、屋上から外壁側に乗り込みます。

これも乗り込みが終わり、完全にロープにぶら下がるまではフォールアレストの作業となります。

 

このように、『ロープ高所作業』をする場合に『ロープ高所作業』のみ行う事は少なく、レストレイン↔フォールアレスト↔ワークポジショニングと作業状態は状況に応じて変化していきます。

この作業形態の変化を考えると、仮に『ロープ高所業』を行う場合であっても、『墜落制止用器具』の特別教育は必要なのでは?というのが私の考えです。

垂らしたロープを下から登り、そのまま降りてくるだけの作業であれば『ロープ高所作業』のみと考えられますが、多くの作業者がこれに該当しないと思います。

労働基準監督署にこの件で問い合わせしても、担当官によって回答は異なりますが、概ね『墜落制止用器具特別教育』は受けておいた方がいいと、話しが帰着するケースが多いと感じます。

 

③海外メーカーのハーネスやランヤードは使っても大丈夫ですか?

以前よりこの質問はよく出ていました。

旧安全帯には『特殊な構造の安全帯』という項目がありました。しかし、この規定で『特殊な構造の安全帯』として使うためには“厚生労働省労働基準局長”が同等以上の性能、効力を有すると認めたものとされておりました。

これはいちユーザーが行うことではなく、本来はメーカーサイドが動くべき内容でしたが、どの海外メーカーもこの作業には着手することはありませんでした。

今回の法改正ではどうでしょうか?

『墜落制止用器具』の法律文面にも、ほぼ同様の文面が第10条に書かれています。

第10条 特殊な構造の墜落制止用器具又は国際規格等に基づき製造された墜落制止用器具であって、厚生労働省労働基準局長が第三条から前条までの規定に適合するものと同等以上の性能又は効力を有すると認めたものについては、この告示の関係規定は、適用しない

この規定に基づく対応については各メーカーとも行いませんでした。

いくつかのメーカーが行った手続きは、すでに海外の規格を通している商品が日本の規格に適合しているのか、強度規定や実験方法等の確認作業を行うことでした。

結果として、『墜落制止用器具』の規格規定に足りうる内容を確認できたとして、会社として適合宣言を出し、対象の商品に『墜落制止用器具』規格“適合”のラベル等を貼付し出荷するに至りました。

日本ではハーネスについて欧米の規格と異なり、第3者機関の検定等が必要ないため、会社で適合の判断を行うことで規格適合をうたうことが出来るルールとなっているためです。

現在はPetzl社、CAMP社、singing lock社等が国内法に適合しているとして、ハーネスやフォールアレストランヤードを『墜落制止用器具』として販売しています。

よって、この適合宣言をしている商品については規格適合品として国内メーカー製造のハーネスやランヤードと同様に日本の労働環境で使用可能と言うことになります。

 

私の結論

確かに法律上は何をしなくてはならないかが規定されています。法律を遵守し作業を行うことはとても重要です。しかし、現在の日本の高所作業を取り巻く法律は施行されたばかりか、尋常じゃなく古いか、のどちらかになります。

法律そのものはあなたの命を守ってはくれません。

自身で調べ・学び、十分な知識と技術を持つことが本質的に重要です。

自分の命は自分自身でしっかり守りましょう!

 

余談

『墜落制止用器具』の法改正は、ようやく国際標準に法律水準を合わせる動きをしましたが、結局日本独自の風習やメーカーサイドの都合(出荷本数など)が含みおかれたという法改正になってしまったのだと思います。

有識者会議の参加者がどういった経歴なのかまでははっきりわかりませんが、少なくとも欧米から経験豊富な見識者が招かれた様子はないように思えます。

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